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残日録 --- The Remains of the Day / 2025-05

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2025-05-06 Tue

 『手紙』(サマセット・モーム)を読んだ---マレーシアだぁ: [Book]

むかし英語で読んだ本をもう一度 日本語で読むとけっこういろいろ発見がある。

『手紙』  を読んだ。

さいしょは「手紙」だ。 クロスビー夫婦はマレーシアでプランテーションを経営していた。 その夜、夫はシンガポールにでかけ、 クロスビー夫人はひとりきりであった。 夜遅く、 隣りのゴム園の管理人、ジェフ・ハモンドが彼女を訪ずれた。 そして事件が起きた。

物語に手紙が登場する前と、 その後のクロスビー夫人の「アスペクト」 (ウィトゲンシュタイン)の変化 (読者の頭の中での変貌)が素晴しい。

つづいて「環境の力」だ。 ドリスは、ロンドンで、 マレーより一時帰国中の若者、ガイと出会い、 恋に落ち、結婚する。 そして二人はガイの荘園のあるマレーへと向かった。 マレーでの二人の生活がはじまる。 荘園までやって来て、 これ見よがしに悶着をおこす 一人の美しい現地人の女性がいた・・・。 下世話に書くと、 「この事件をきっかけに、 二人の仲は一気に悪化して、 とうとう破局をむかえることに・・・」となる。

この物語、 ぼくにはハッピーエンドに見えるのだが、 不謹慎だろうか・・・。

 『若い女の死』(ジョルジュ・シムノン)を読んだ---かわいそうなロニョン: [Book]

『若い女の死』 を読みおわった。 どうやったらこんなに上手に物語を語れるのだろう。 ある女が殺された。彼女についてまったく何もわからっていない。 そこから、 地道な捜査をつうじて、 彼女という女性にじょじょに肉体がやどっていく、 言ってみれば、それだけの単純な筋なのだ。 しかし、一回読み始めると、 もう止めることができなくなってしまう。 子どもたちが死体さがしにでかける、という 単純しごくなプロットだけで、 ぐいぐい読者をひきずっていく あのスティーブン・キングのような力だ。

もちろん、 あの不機嫌な警部ロニョン [--アメリカ人がパリで我が物顔で大暴れする回 (シムノン 2012) (『メグレと生死不明の男』)に登場していた、 あの陰気なロニョンだ--] という魅力的な登場人物が、 この本の魅力の大きな部分ではあるが。

2025-05-12 Mon

 『雨』(モーム)を読了---「雨」って、モームの数ある「恋愛もの」で唯一ロマンティックな落ちの物語かもしれない: [Book]

モームの『雨』  を読みおわった。 「雨」の筋は、もちろん、知っている。 それでも、ドキドキしながら読んだ。 ミス・トムソンの琴姫七変化みたいな変貌が楽しい。 ミストムソン役には1980年代のシンディー・ローパーがいいかな。

「ホノルル」。 「聡明な旅行者というものは想像だけの旅行をするものである」という 有名な書き出しの物語だ。 ホノルルで「わたし」が出会った 不細工な白人、バトラー船長と、 とても彼に似つかわしくない美しい原住民の娘、 原住民の航海士、無骨なバナナ。 「わたし」は彼らにまつわる恋物語を聞かされる。 落ちがたのしい。

「東洋航路」。 中年の女性、ハリスン夫人の物語。 物語は船が着いたシンガポールの楽しい描写から始まる。 --- 「マレー人、 これはここの土着の住民なのであるが、 おどおどしたように場末に住んでいて、 数も少ない。 街頭にむらがっているのは、調子のよい、すばしこくて 勤勉な中国人である。 色の黒いタミル人は、まるで他国にほんのしばらく 滞在している旅人みたいに、 ひっそりと裸足(はだし)で歩いているが、 瀟洒で裕福なベンガル人は、その環境のなかで楽々としており、 自信たっぷりである。 狡猾で人にとり入ることのうまい日本人は、 何か急な秘密の用件で忙しそうだ。」

ハリスン夫人は夫の浮気を機にマレーを出て、 イングランドに帰るところだった。

醒めることを分かっている中年の恋の物語、 「いかにもモーム」。

2025-05-19 Mon

ニュース…「【フローレス島】シッカ県のトランスジェンダー・コミュニティがナンガハレとナンガフレの子供たちを引き合わせる」---カトリック教会と植民地主義に起因する(かもしれない)土地紛争、そして教会によって追放された住民の傷をいやすトランスジェンダーの女性たち;なんだか話が複雑になってきたなぁ : [Category Flores]

[Visit Website Floresa]  

原題は: Komunitas Transpuan di Sikka Pertemukan Anak-Anak Nangahale dan Nangahure, Cara Tumbuhkan Empati dan Solidaritas Sejak Dini

Sider による要約は:

このドキュメントは、 インドネシアのフローレス島におけるナンガハレの土地紛争と、 その被害者である子どもたちのトラウマケア活動を中心に描いている。 コミュニティ団体 Fajar Sikka は、 土地強制立ち退きの影響を受けた子どもたちに対し、 共感や連帯感を育むための「トラウマヒーリング」や交流活動を実施しており、 孤立感を軽減させている。 一方、 土地の所有権を巡る長期的な対立や弾圧の過程も伝えられ、 地域の土地紛争とそれに伴う人権侵害の深刻さが浮き彫りとなっている。 この活動は、 被害者の心の癒しとコミュニティの連帯を促進する一方、 土地紛争の根深さと解決の難しさも明示している。

以上、要約おわり。

"Transpuan" はまったく知らない単語だった。 "Transgender" & "perempuan" (インドネシア語の女性)の portmanteau [--「かばん語」、ハンプティーダンプティーがつかった--] だという。

シッカ県(ぼくの調査地、エンデ県の東隣の県)のナンガハレ (Nangahale) の 事件は(もともとの事件も複雑であるが)かなり不思議な展開をみせている。 このブログでも紹介したが、 シッカ県のとあるカトリック教会に所属する会社が、 彼らの所有している土地(ナンガハレ)から、そこに住んでいる人々を 追い出したのである。 住民は、この土地はもともと彼らのものであり、 植民地時代に違法にとりあげられたものだ、というのである。

くわしくは、私のブログの こことか、 こことか、 ここ とかを見てほしい。

そして、難民となったナンガハレの住人の、 とりわけ子供達の心の傷を癒すために、 トランスジェンダーの女性たちが立ち上がった、という記事である。

More . . .

2025-05-28 Wed

 学会まであと10日;発表予定の原稿、「いじめの誘惑 --- ヒト、空気を読む」のファースト・ドラフト完成---15分の持ち時間だが、読んでみたら30分かかった (- -;): [Anthropology]

6月8日の日本文化人類学会の研究大会での発表原稿、 難産だったが、なんとかおわった。 〆切りの魔力だ。 内容もよいと思う。 ここ にあります。

とはいうものの、 長過ぎる。 いまから10日間でなんとか半分にしなければ・・・。

2025-05-30 Fri

ニュース…「【フローレス島】東マンガライ県は、ゲンダン・コロルを伝統的共同体として認定しました」---"Masyarakat Adat" 「伝統的共同体」の政治的な変容かな・・・ : [Category Flores]

[Visit Website Ekora NTT]  

原題は: Pemkab Manggarai Timur Tetapkan Gendang Colol sebagai Masyarakat Hukum Adat - Ekorantt.com (2025-05-23 付)

リード文は: この認定は、伝統的共同体の福祉向上と、文化的価値に即した持続可能な伝統的地域の管理を促進することが期待されています。

以下、Sider による要約: 東マンガライ県政府は、2025年5月20日にゲンダン・チョロル村の伝統社会を正式に「社会法的コミュニティ」(Masyarakat Hukum Adat: MHA)として認め、法的保護と地域資源の持続可能な管理を促進することを決定した。この認定は、長期間にわたる調査や住民の参加を経て行われ、地域文化や伝統的権利の尊重に基づいている。認定はまた、地域の社会的および経済的発展を支える手段として期待されている。

以上で要約終わり。

以下 【Satoshi Nakagawa】: 1980年代インドネシアのアダットの国家化 (わたしの論文、「インドネシア語政治作文入門」(中川 1994) を参照してください。)とも、 東ティモールで起きている「文化の復興」とも違う、 ある新しい流れがはじまっているようだ。

論文にするには、 まず、"masyarakat adat" の使い方の変遷をしらべることから始めなければいけない。 いまいち、やる気が起こらないのは、 ぼくの村にはあまり関係しないからだ。

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最終更新時間: 2025-07-11 22:08