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Book - 残日録 --- The Remains of the Day

最終更新時間: 2025-07-23 20:31

2025-06-21 Sat

 The Man in the Brown Suit (by Agatha Christie) を聞き終わった---ジェットコースター・ムービーみたいに、楽しめた: [Book]

この1週間ほど散歩のお伴は The Man in the Brown Suit だった。 [--BBC のフルドラマタイゼーション--] じつに楽しかった。 [--一度読んだと思うが、筋をまったく忘れていた--] 強いて分類すれば、 たぶん The Secret Adversary (Tommy and Tuppence series)の流れかな。 ぼくの中では、 Why Didn't They Ask Evans 同様の「単発もの」という分類だったが。

女主人公 Ann Beddingfield は "Pamela in ..." シリーズの大ファン。 スピルバーグがあこがれた、シリーズものの冒険映画のようなものだと思う。 その映画の主人公のパメラのように、 アンはつぎつぎに冒険に巻き込まれていく。 クリスティは書いていて楽しくてしょうがなかったんじゃないかしらん。

ちょっと目には Paul Temple シリーズに似てなくもないが、 ストーリーはきっちりしている --- ポール・テンプルでは、ただただ回数をかせぐために、 [--ポール・テンプルシリーズは有名なラジオ・シリーズ--] いろんな事件が起きるのだが、 さすがクリスティである、そんなことはない --- The Man in the Brown Suit では、それぞれの事件は 緊密に(それなりに「緊密に」)つなぎあわされている。

全編をつらぬく謎は "The Colonel" が誰なのか・・・というものだが、 選択肢はそれほど広くないので、 謎をといても、読者がびっくりするわけではない。 それでも、 "The Colonel" のキャラクターが楽しいので許してあげる。

あまりに愉快だったので、 原作を読みはじめる。 たいていの人物が、「みた目」や「最初の印象」や 「自分で言うところの人間」ではないので、 最初から読むのが実にたのしい。 「あ・こいつ、最初に出てきたときはこんな印象だったんだ」 [--なお、ナレーションのほとんどはアンの一人称語りである--] とにやにやしながら、 今、読んでいる。

いろいろ書きたいこともあるが、 とまれ、 とても楽しんだ。

2025-05-12 Mon

 『雨』(モーム)を読了---「雨」って、モームの数ある「恋愛もの」で唯一ロマンティックな落ちの物語かもしれない: [Book]

モームの『雨』  を読みおわった。 「雨」の筋は、もちろん、知っている。 それでも、ドキドキしながら読んだ。 ミス・トムソンの琴姫七変化みたいな変貌が楽しい。 ミストムソン役には1980年代のシンディー・ローパーがいいかな。

「ホノルル」。 「聡明な旅行者というものは想像だけの旅行をするものである」という 有名な書き出しの物語だ。 ホノルルで「わたし」が出会った 不細工な白人、バトラー船長と、 とても彼に似つかわしくない美しい原住民の娘、 原住民の航海士、無骨なバナナ。 「わたし」は彼らにまつわる恋物語を聞かされる。 落ちがたのしい。

「東洋航路」。 中年の女性、ハリスン夫人の物語。 物語は船が着いたシンガポールの楽しい描写から始まる。 --- 「マレー人、 これはここの土着の住民なのであるが、 おどおどしたように場末に住んでいて、 数も少ない。 街頭にむらがっているのは、調子のよい、すばしこくて 勤勉な中国人である。 色の黒いタミル人は、まるで他国にほんのしばらく 滞在している旅人みたいに、 ひっそりと裸足(はだし)で歩いているが、 瀟洒で裕福なベンガル人は、その環境のなかで楽々としており、 自信たっぷりである。 狡猾で人にとり入ることのうまい日本人は、 何か急な秘密の用件で忙しそうだ。」

ハリスン夫人は夫の浮気を機にマレーを出て、 イングランドに帰るところだった。

醒めることを分かっている中年の恋の物語、 「いかにもモーム」。

2025-05-06 Tue

 『手紙』(サマセット・モーム)を読んだ---マレーシアだぁ: [Book]

むかし英語で読んだ本をもう一度 日本語で読むとけっこういろいろ発見がある。

『手紙』  を読んだ。

さいしょは「手紙」だ。 クロスビー夫婦はマレーシアでプランテーションを経営していた。 その夜、夫はシンガポールにでかけ、 クロスビー夫人はひとりきりであった。 夜遅く、 隣りのゴム園の管理人、ジェフ・ハモンドが彼女を訪ずれた。 そして事件が起きた。

物語に手紙が登場する前と、 その後のクロスビー夫人の「アスペクト」 (ウィトゲンシュタイン)の変化 (読者の頭の中での変貌)が素晴しい。

つづいて「環境の力」だ。 ドリスは、ロンドンで、 マレーより一時帰国中の若者、ガイと出会い、 恋に落ち、結婚する。 そして二人はガイの荘園のあるマレーへと向かった。 マレーでの二人の生活がはじまる。 荘園までやって来て、 これ見よがしに悶着をおこす 一人の美しい現地人の女性がいた・・・。 下世話に書くと、 「この事件をきっかけに、 二人の仲は一気に悪化して、 とうとう破局をむかえることに・・・」となる。

この物語、 ぼくにはハッピーエンドに見えるのだが、 不謹慎だろうか・・・。

2025-05-06 Tue

 『若い女の死』(ジョルジュ・シムノン)を読んだ---かわいそうなロニョン: [Book]

『若い女の死』 を読みおわった。 どうやったらこんなに上手に物語を語れるのだろう。 ある女が殺された。彼女についてまったく何もわからっていない。 そこから、 地道な捜査をつうじて、 彼女という女性にじょじょに肉体がやどっていく、 言ってみれば、それだけの単純な筋なのだ。 しかし、一回読み始めると、 もう止めることができなくなってしまう。 子どもたちが死体さがしにでかける、という 単純しごくなプロットだけで、 ぐいぐい読者をひきずっていく あのスティーブン・キングのような力だ。

もちろん、 あの不機嫌な警部ロニョン [--アメリカ人がパリで我が物顔で大暴れする回 (シムノン 2012) (『メグレと生死不明の男』)に登場していた、 あの陰気なロニョンだ--] という魅力的な登場人物が、 この本の魅力の大きな部分ではあるが。

2024-09-21 Sat

 就寝時の読書、きょうはこわいこわい『高野聖』---一気読み: [Book]

就寝時のベッドの中の読書、 きょうは『高野聖』(泉鏡花)。 蛭の部分は噂に知ってはいたが、 「こわいもの見たさ」だ。

蛭の箇所は聞きしにまさる迫力でした。 体のそこら中が痒くなった。 そして、清流で体をあらったときの気持ち良さ、 もうこのままで。[--鏡花の文体のものまね--]

2024-09-09 Mon

 本として買った Towards Zero を読みはじめた---既読だった!うれしい再会: [Book]

BBC のラジオドラマでたのしんだ クリスティの Towards Zero (本)を購入した。

最初に判事トレヴィスのエピソードからはじまる。 「あれ、ここで出てきちゃうと、もしかしたら殺されないのかも」・・・

次の章はマクワーターの紹介だ。 「ラジオドラマとちょっと違うけど、ま・こんなもんかな」

三番目ではバトル警視 (superintendent Battle) が登場する。 娘が学校で問題を起こしたので、 両親が学校に呼ばれるところだ。 「あ!」

すべて思い出した。既読です。 でも、楽しく再読できそうだ!

ラジオドラマが、 原作をどう変えたのか考えながら読み進めることとしたい。

2024-07-12 Fri

 『太陽から三番目』を読んでいる---「恋人クン」、とてもとても きもちわるかった・・・: [Book]

リチャード・マシスンの 『太陽から三番目』 (マシスン 2021) を市立図書館(電子図書館)から借りた。 初期SFの頃の作家の短編集だ。

第1作は「モンスター誕生」 --- いい意味でも悪い意味でもSF初期の作品だ。 筒井康隆風。こわかった。 「魔女の戦争」もよく似たアイデアだ。

「白絹のドレス」は、 「モンスター誕生」と「魔女の戦争」を足して二で割ったような作品。 怖い! 「太陽から三番目」は初期SF風にありがちの ワンアイデアストーリー --- つまらない。 「ゴルゴタへの旅」はつまらない。 キリストもけっきょく新興宗教の山師、というはなしの方が よっぽでおもしろかったのだが。

「旅芝居の火星人」、うん。 不気味だ。 他のSFとはちと違っていると思う。

「異星の恋人クン」、 怖かった。ほんとうに怖かった。いちばん怖かった。 スティーブン・キングみたかった。

「我が家は宇宙船」、 途中で映画俳優への言及があるのがおもしろかった。 「ピーター・ローレ (Peter Lorre)のように不気味な」 管理人がでてくる。 調べてみた・・・「あ!あいつだ」。 ぼくがとても好きな役者だ。 『カサブランカ』にも、 『マルタの鷹』にもでてくる。 あの自信なさそうな男だ。 彼は、「不気味」とは全然違う雰囲気をかもしだしている。 ピーター・ローレのイメージは、むしろ、やはりぼくの大好きな俳優、 ジョン・カザーレと重なる。 『ゴッドファーザー』のアルパチーノの頼りないほうのお兄ちゃん、 『狼たちの午後』[--原題 Dog Day Afternoon の方がぴったり--] にでてくる アルパチーノ率いる銀行強盗団の中の足手纏いの男だ。 とくに『狼たちの午後』は泣いちゃう。

ストーリーはワンアイデアストーリーだ。 それもあまり面白くないアイデアだと思う。 [--SF初期のワンアイデアストーリーは、当時は、おもしろかったのだろうと思う--]

とは言え、総じて、とても楽しめるSF短編集だった。 ぼくは最近のSF(「ハードSF」は除く)はあまり楽しめない。 ぼくが好きなのは初期、黄金期あたりだ。

2024-03-23 Sat

 『ROCA』とその続編『花の雨が降る』(いしいひさいち)を一気よみ。ほお・・・っ。---漫画で感動したのは『パーマネント野ばら』以来かしらん。: [Book]

なかなか寝つかれないので、 買ったばかりの『ROCA』を読んだ。

じ〜〜ん。

ミノがいとおしい。

いしいひさいちのギャグセンスは大好きだった。 不覚なことに絵のうまさに全然気がつかなかった。 ストーリー漫画は絵が下手で、 ギャグ漫画は絵が上手なのは当り前なのだが、 いしいひさいちがこんなに上手だとは気がつかなかった。 時々でてくるロカの美人画も捨てがたいが、 ミノのアップ、背景なしのアップがとてもいい。

つづけて『花の雨が降る ROCA エピソード集』を 読む。 これらのエピソードで、 ROCA のストーリーが より濃い色で浮かびあがってくることになる。

「そうか、こんな続編の書き方があるんだな・・・」

『花の雨が降る』は唐突に、そして衝撃的に終わるのだが、 それによって『ROCA』の不思議な終わり方に光を あてることになる。

しばらく ちあきなおみを聴いて余韻を楽しんだ。

2024-03-03 Sun

 電子図書館から借りた『発狂した宇宙』を読んでいる---初めて読んだ、クラシックは楽しい;筒井康隆に羨ましがられてしまった: [Book]

ひさしぶりに市立図書館(電子図書館)で 本をかりた。 フレデリック・ブラウンの 『発狂した宇宙』  だ。 買ったばかりの iPlay50 Pro Mini NFE で本を読んでいる。

以下、ほんのちょっとだけ spoiler (「ネタバレ」)っぽいところがあるので、 要注意。 犯人をばらすとか、そんなだいそれたもんではないです。

More . . .

2023-12-25 Mon

 Wombles to the Rescue (by Elizabeth Beresford) を読み終わった---The Borrowers みたいな面白さ: [Book]

きょうは一日中 現実逃避 --- 朝から Wombles to the Rescue (Beresford 2012) を読んでいる。 The Wombles の第1巻を (Kindle ではなくほんとうの本 [--「なま本」「実本」?--] を)注文したのだが、 なかなか来ないので Kindle 版でこの巻(全6巻中の第5巻)を購入したのだ。 イギリスのウィンブルドン広場の地下に住んでいる 不思議な動物、 ウォンブルの物語だ。 彼らはうさぎのように穴 (burrow) で共同生活をしている。 ウィンブルドン広場に落ちている廃品を回収して、 ブリコラージュを楽しんでいる。 いろんな発明がでてきておもしろかった。 ちょっと The Borrowers (『床下の小人たち』)に 似ているところがある。 尤もウォンブルのブリコラージュは、概して 「小人たち」よりスケールが大きいかも。 ウェリントン(勉強好きの若いウォンブル)が作った oil rig (石油掘削装置)が どんなものか気になってしょうがない。 これがきっかけで、 挿絵がほとんどない事に気がついた --- これならシリーズの残りは Kindle でいいかも。

2023-09-17 Sun

 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(ウィアー)、途中で本を置けなくなってしまう!---いままで読んだSFのうちのベスト中のベストだ!: [Book]

2014年に入院したとき、 『火星の人 (ハヤカワ文庫SF)』 (ウィアー 2014) を読んだ。 たいへんに感動した。 数年後に同じ著者、ウィアーの第2作、 『アルテミス(上)』 (アンディ・ウィアー 2018) (および『下』)を読んだ --- ちょっとがっかりした。 つまらない訳ではない。 饒舌口語体は一人称主人公が女の子でもいっそう磨きが かっていた。 ただ・・・。

そして第3作、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』! これはすばらしい! [--なお、「ヘイル・メアリー」はアメリカンフットボールで、 タイムアップぎりぎりでいちかばちかで投げる盲滅法のパスのことだという。--]

物語は主人公の目覚めからはじまる。 ある意味、 Triffid (『トリフィドの日』)の不気味な 冒頭と似ている --- 『トリフィドの日』の主人公は目をさますと、 何も見えない。 どうやら病院のようではあるが、まわりに誰もいない。 いったい何が起きたのかを 主人公が(文字通り)手探りで発見していく過程は とてもスリリングだ。

さて、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』だ。 主人公が目をさますと、 彼のまわりには誰もおらず、 そして記憶がないという状況なのだ。 せまい部屋の中は不思議な状況だ。 環境から得られる限られたデータからいろんなことを科学的に推論すると同時に、 記憶がすこしづつもどってくる。

物語の背景を全部書いてしまいたいのだが、 それを発見してゆく過程 (それを主人公が発見してゆくのを、ぼくらが見てゆく過程) を楽しむのが、物語の前半部の醍醐味なので、 それについてはここに書くわけにはいかない。 最も重要は背景を一つだけバラしてしまおう --- ある大事件だ。 それは・・・言おうかな・・・言っちゃっていいのかな・・・ やっぱりやめよう・・・でも言いたい・・・

それは、 --- やっぱり言ってしまお! --- なんと・ま、太陽が病原菌に感染してしまった!という事件なのだ。 ここで確認しておきたい・・・ この小説は『ドラえもん』みたいなんじゃなくって、 ハードSFだ。

さて、主人公がある程度まわりの状況を、 そして 自分が何をしなくてはいけないかをそれなりに理解した時点で、 もう一つの大事件が起こる。 あ・言ってしまいたい! ・・・「でもそれを言っちゃぁおしまいだよ」・・・。 あ・言いたい、言いたい。

この第2の大事件のあと、 主人公は、さまざまな謎を(観察と実験と推理で)解き、 さまざまな難局をのりきる。 この乗り切りかたがまた素晴しいのだ・・・ あ・言いたい!言いたい!

「今迄読んできたSFで一番面白い!」と自信をもって言える。

推理小説としてもベスト3にはいると思う。 [--最近の「推理小説」には推理がないのが多い--]

ウィアーの次作がよみたい!

ぼくも小説が書きたい!

2023-08-25 Fri

 『ドリトル先生の動物園』を読み終わった---この話も、あの話も面白い: [Book]

『ドリトル先生の動物園』 (Hugh Lofting 2000) を読みおわった。 生まれついてのお話上手っているんだなと思う。 これでもう10回くらい読んでいるのだが、 何回読んでも面白い。

スティーブン・キングに並ぶ才能だと思う。 ロフティングは、ストーリーそのものが面白い。 キングはストーリーも面白いのだが、 それ以上に、その語り方が上手なのだと思う。

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