晩ご飯のあと、いつもの通り、 ザプ(高床式になった「台所」の部分)で リヴァやリン、ハニと雑談してる。 マヌカコ(鶏の鳴き声)が聞こえた。 一番鶏にしては早い。 リヴァとリンが不安そうに顔をみあわせている。 リヴァによれば、 時間はずれのマヌカコは、 「アタポゾ(妖術師)がウズ(頭)をかついだまわっている」印だという。 「誰の頭?」と聞くと、 「もちろんソフィのだ」という。
アタポゾは人を殺すことができる。 殺した人間をアタポゾは喰らうのだ。 その饗宴に他のアタポゾたちも集まってくる。 エンデの人たちが葬式のあと怖がっているのは 幽霊ではない。 村の中を彷徨する、 饗宴にあつまるアタポゾたちである。
饗宴を終えた アタポゾの一人は死者のウズ(頭)をもって 村々をまわる。 ウズを売るためだ。 まちがってウズを買ってしまった家の成員が次の 犠牲者になるという。
「そう言えば・・・」とリヴァが話しはじめる。
センドの息子が死んで4晩目のときだ。 リヴァとハニが家のなかにいた。 (まだ存命だった)母親はもう寝ていた。 家のすぐ外で、 ドーンという荷物をおろすような音とともに 「ほー」というため息が聞こえた。 リヴァが冗談に「うちの母親が年取っているからといって、 こんなところにウズを置くな」と声をかける。 ハニが「(冗談でも)そんなことを言うんじゃない」とたしなめた。ところがいつまでたっても 外にいるらしい者は返事をしない。
二人はとても怖くなった。 リヴァとハニは、 寝ている母親の部屋にはいり、 三人で寝たという。