序論

引用と人生

Satoshi Nakagawa

2024-06-16

1 引用と文化のプロスペクタス

1.1 はじめに

この授業のテーマは「引用」である。引用をキーワードに文化を読み解こうとする試みである。

出発点はさまざまなな呪術実践の中に見られるひとびとの ためらい である。

2 第0章 相対主義とアスペクト把握

この本(『引用と人生』)は、異文化の見つけ方(相対主義の可能性)の続編として考えられている。『相対主義の可能性』を読まなくても、『引用と人生』を理解できるように書かれている。しかし、『相対主義の可能性』の流れを知ることは、この本の主人公である引用とアスペクト把握がどのように全体の議論の中に導入されてきたか、その文脈を知ることとなる。それはこの本の理解を広げてくれるだろう。

3 序章

第0章:相対主義のまとめにおいて、簡単に『相対主義の可能性』の議論を復習したい。

4 第1章 呪術へのためらい

第1章:呪術へのためらい―異文化の見える時

ひとびとは呪術は信じきっているわけではない。たしかに『信念の呪縛』(浜本 2014)に書かれているような社会もある。しかし、多くの社会では「ためらい」の中で呪術が選ばれているのだ。 (白川 2012) (???)

この授業は、呪術の実践にあらわれるこの「ためらい」を出発点にして、理論を組み立て、それを芸術、修辞、教育、制度、いってみれば文化全体に適用しようという試みである。

第2章:ウサギかアヒルか―アスペクトと相貌

相貌と観点、全体論。アスペクトと観点なし、全体の把握なし。

5 第3章 引用論

指示と直示について議論する。

指示において、ラッセルの確定記述の例、(ラッセル 2000) そしてそれに反対するストローソンの指示の議論。(ストローソン 2000)

クワインの存在論にも触れるべきか。 (クワイン 1992)

6 第4章 ゲーム論

第3章:「これはケーキです」

のめり込むと一抜けるが単相と複相に相当することを示す。

さらに、2つの複相、すなわちアスペクトと相貌が、一抜けるとのめるこむを両方行なうことに相当することを示す。ベイトソンの遊びの議論((ベイトソン 2000) )を引用すること。

ここにウォルトン (Walton 1993) の「虚構世界の拡張」議論をいれることを考えよう。

アスペクト論、引用論がゲーム論でつながった。

人類学の記述の問題に触れることで、「二つの複相」議論がより説得的になるだろう。

A B1 B2
アスペクト 単相 複相 複相
(アスペクト) (相貌)
引用 使用 言及 使用と言及
ゲーム のめりこむ 一抜ける 遊ぶ
原住民 旅人 人類学

物語として、よろめき物語にモーム型をつけくわえる

この表を利用して呪術論を

7 流用と叡智

流用と叡智

ここから第二部「民族誌篇」となる。

B1 の状態

8 地と図

クピは世界一高い山か?

エンデの話(学校者と出稼ぎ者)とドゥルゼの話(豹は断食をする)。

9 知識論:内在主義と外在主義

第6章:クピは世界一高い山か?―信念と知識

ground と同じタイトルだ?

9.1 他人の心

知識と信念が引用であること。

オースティンの「他人の心」(Austin, n.d.) を説明する

顕在的遂行発話だということ。

P を見えない知識、 I know P を見える知識と呼ぶ。

9.2 JTB

JTB をめぐる内在主義と外在主義の議論を紹介する。

そして、

示す。

10 アイロニーとパロディ

教育とアイロニー

野矢の教育論とイヌイットの教育をまぜて、アイロニーへのイントロとする。

エコー理論を引用理論と読み換えて、ウィルソン=スペルベルから菅野のアイロニー理論を読み換える。

11 制度と危機

社会の危機

11.1 ゆらぎ

を前振りにして、制度の問題に迫る。

11.2 社会の哲学

もちろん、サールの『社会の哲学』についても触れるべきだ。

整理するのに、いちばん時間がかかりそうだ。

できればエンデの贈与と呪術についても触れたい。

11.3 虚構の存在論

ここでモーム型を導入し、さらにウォルトンの「ごっこ」理論をもう一度引くべきかもしれない。

たぶん、2つか3つに分割されるだろう。

Austin, J. L. n.d. “Other Minds.” In Philosophical Papers, Third, 76116. Oxford, New York, Toronto, Melbourne: Oxford University Press.

Favret-Saada, Jeanne. 1980. Deadly Words: Witchcraft in Bocage. Cambridge: Cambridge University Press.

Pigg, Stacy Leigh. 1996. “The Credible and the Credulous: The Question of "Villagers’ Beliefs" in Nepal.” Cultural Anthropology 11 (2): 160201.

Walton, Kendall L. 1993. Mimesis as Make-Believe: On the Foundations of the Representational Arts. Reprint. Harvard University Press.

クワインW. V. O. 1992. “なにがあるのかについて.” In 論理的観点から:論理と哲学をめぐる九章, 129. 勁草書房.

ストローソンP. F. 2000. “指示について.” In 現代哲学基本論文集 Ii, edited by 坂本 百大, 20351. 勁草書房.

ベイトソンG. 2000. “遊びと空想の理論.” In 精神の生態学, 改訂第2 ed., 25878. 新思索社.

ラッセルB. 2000. “指示について.” In 現代哲学基本論文集 I, edited by 坂本 百大, 4578. 勁草書房.

幸子. 2014. 革命キューバの民族誌: 非常な日常を生きる人びと. 人文書院. http://amazon.co.jp/o/ASIN/4409530461/.

早川真悠. 2015. ハイパー・インフレの人類学:ジンバブエ「危機」下の多元的貨幣経済. 人文書院.

浜本満. 2014. 信念の呪縛―ケニア海岸地方ドゥルマ社会における妖術の民族誌. 九州大学出版会.

白川千尋. 2012. “言葉・行為・呪術.” In 呪術の人類学, edited by 白川 千尋 and 川田 牧人, 946. 人文書院.