ぼくは空を飛んでいる。ぼくは逃亡している。 日本中を追いかけられているのだ。
どこに行っても、ぼくだと分かり、 人びとがぼくを追い掛けまわす。 逃避行の最初の頃は飛行は順調だった。 しかし時間がたつにつれ (いつもの通り)だんだん飛ぶことが 難しくなってくる。 飛翔の高度はどんどん下がり、 せいぜい2メートル程度になってしまった。 速度はまったく出なくなる。
関西から逃げて、 関東までやって来た。
九十九里寺というところに 逃げこむが、 ここにも追手がいた。 寺から外に飛び出す。
もう飛べない。 河原に着陸する。 数人の子供と遊んでいる主婦が二人いた。 「こんなに疲れきった人間をつかまえるのか」と ぼくが言う。 一人の女性がぼくを助けてくれる。 子供たちといっしょに 彼女の家に行く。
疲れきっているので、 ぼくは寝てしまう。
夢の中で眠ったのははじめてのような 気がする。