Prev / Next / 残日録 --- The Remains of the Day

 ホームレスになり、その上に官憲に追われる:[Dream]

2016-04-06

 オートバイの後部座席に乗っているとき、 とつぜん 「走っているバイクから落ちてみたくなった」という 体験談を聞いたことがある。 高い崖をみていると「ここから飛び込みたい」という 気分になるという話も聞いたことがある。 それと同じ種類の「気分」だったのだろう。 とつぜん人に噛みつきたくなった。 こうすると、これまでの社会的な地位もすべて なくなってしまうことに気づくと、 その分だけ、どうしてもやってみたくなった。 そして噛みついた。 そして社会から脱落した。 崖に飛びこんでみたのだ。

もう家をはじめとして 所有物はなにもなくなってしまった。 これからホームレスとして生きるのだ。 それでも気持ちは落ち込んではいなかった。 手持ちの現金は10万円ほどだ。 倹約しなければいけないのに、 実家に服を取りに行くのに新幹線をつかった。 飛んで行けないことはないが、 さすがに大阪/東京を飛びつづけるのは つらいのだ。 実家に着いて、 ニコニコしながら、 父親に 「こんなふうになってしまいました」と挨拶した。 彼がどんな反応をしたかは覚えていない。

そして、とうとう放浪を始めた。

さいしょのうちは 空を自在に、そして高くたかく 飛ぶことができたので、 高揚とした気分だった。

だんだんと空を飛ぶ能力が落ちてきた。 思ったとおりに飛べず、 地上すれすれをただようだけだ。 それさえも、たいへんなエネルギーを使う。

スエーデン人のルンペンの家に招かれた。 ゴミ屋敷だった。 出された食べ物は 吐き気のするようなモノだった。

空も高く飛べなくなる。

とつぜん 官憲がぼくを追っていることに気づいた。 社会から脱落しただけではなく、 これからは 官憲に気づかれないように生活しなくてはならないのだ。 「なんであんなことをしてしまったのだろう」という 後悔の気持ちがわいてきた。

目が覚めて、 夢だと知って、ほんとうに嬉しかった。

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