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1-5 魔法の瞬間

還元論と全体論

2013-10-16 09:29

中川 敏

1 序
1.1 これまでの話---姿勢
1.2 ポイント
1.3 キーワード

2 還元主義対創発主義

3 心が生まれる時
3.1 二人のデネット
3.2 電子ポットから人間へ
3.3 デネット2の還元主義
3.4 創発主義
3.5 創発主義者は歴史にかかわらない

4 まとめと展望


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1. 序

この章は第1部の最後となる。 第二部全体のテーマ、 「心」の議論をまとめることとしたい。 そのテーマは「還元論と全体論」となろう。

1.1 これまでの話---姿勢

これまでの結論をまとめておこう。 第一部は「姿勢」をめぐって 行なわれたと言えよう。 四つの姿勢が語られた。 物理姿勢、設計姿勢、 志向姿勢そして対人姿勢である。

設計姿勢は 物理姿勢の特殊形、 対人姿勢は志向姿勢の特殊形と 見ることが可能であろう 1 ここでは、 四つの姿勢を 物理姿勢と志向姿勢の 二つの姿勢(類型)に単純化して 見ていくこととする。

1.2 ポイント

この講義では、 心の議論を巡る二つの立場が紹介される。 その対立に名前をつけておこう: 一つの立場を「還元論」「還元主義」、 そしてもう一つの立場を 「全体論」「創発主義」と名付ける。

この講義では 心の誕生を、 次回の講義では 社会の誕生をめぐる 議論を辿っていきたい。

1.3 キーワード

2. 還元主義対創発主義

還元主義は もっとも常識的な考え方である 2 --- 全体を知るには部分に分析して (還元して)考えればよい、という 考え方だ。 部分を総合していけば、 全体が見えるのである。

全体論は、 いささか「奇矯な」とさえ言える 考え方である。 良識的な還元主義に反して、 こう言うのだ: 「全体は部分の総和以上のものである」 (アリストテレス『形而上学』)と。 全体論、創発主義を理解するには、 ゲシュタルトの説明から 入るのが分かり易いであろう。

・・・・・ 【工事中】 ・・・・・

【END ---カット&ペースト】

還元主義創発主義
全体論
全体は部分の総和である総和以上である
アルゴリズム新しい性質が生まれる
じょじょいっき
唯名論実在論
「赤さ」は存在しない、赤いモノは存在する「赤さ」は存在する
実践知暗黙知
ゲシュタルト
メロディ
酸素・水素水の冷たさ
点の集合絵の美しさ
目、鼻、口の集合顔の美しさ、顔の認識
生物は化学へ還元される還元されない
化学は物理へ還元される還元されない
説明理解
決定論自由
非両立論両立論
心はない心はある
削除主義創発主義

3. 心が生まれる時

魔法の瞬間とは、 モノが者になるときの事である。 ・・・・・ 【工事中】 ・・・・・

3.1 二人のデネット

ここまでのデネットの議論は、 すくなくともわたしの紹介の仕方での 彼の議論は、 「説明と理解」の角の間をとおり抜ける 視点の提供者である。 すなわち、彼の議論を、 和解不可能な対立を 理論的なアリーナから 実践的なアリーナ(日常生活の場、 「生活世界」 [ wittgenstein-pi-j ])へと 移動した者として紹介した。

【理論的 vs 実践的は いいタームだと 思ったが、 やめたほうがよさそうだ。 [2012-11-20] 「本質 vs 見掛け」はどうだろう。 存在論 vs 認識論は 先に行きすぎているが、 いずれはその話になる。】

「魔法の瞬間」について 語るデネットは、 ふたたび理論的なアリーナへ 戻る。

前者のデネット、 姿勢を有意味なものとして 議論するデネットを デネット1、 後者のデネット、 すなわち 姿勢は「便宜的なもの」であるとして 議論するデネットを デネット2と呼ぶこととする。 わたしは、どちらのデネットが 正しい読みかたなのか、自信はない。 おそらく、プラグマティズムの真理論を 展開するなかに、 この二人のデネットは矛盾なく 統合されるのだと思う。 この二人のデネットの統合の問題は 先送りしておきたい。 とりあえず、 われわれは二人のデネットを考えておこう。 そして、 この講義では、 デネット2を議論するのだ。

「便宜的」という言葉で わたしが何を意味しているかを簡単に 触れておこう。

ドーキンスは言う: ・・・・・ 【電子の動きと溺れた人を助ける 人間の動き】 ・・・・・ ・・・・・ 【進化を志向的に語ること→ つねに遺伝子レベルから語ることができる】 ・・・・・

簡単に言えば、 志向性は比喩なのだ、ということである。

3.2 電子ポットから人間へ

以降、 この講義でのデネットはデネット2 に限定することとする。

「魔法の瞬間」とは、 この姿勢議論の創始者、 デネット [ dennett-intentional-j ] のことばである。 志向姿勢を電子ポットに使うこともできれば、 人間に使うこともできる。 デネットはわれわれに注意をうながす。 電子ポットに志向姿勢で接するのは 比喩的で、 人間にそうするのは、比喩ではない、 という考え方を取るべきではない、 というのだ。

志向姿勢がふさわしくなるような、 電子ポットからん人間の間の遷移の中で 「魔法の瞬間」はない、 というデネットは言う。

その場その場で 役立つやりかたで記述すればいいのである、 とデネットは言う。 物理的、機械的知識を欠くものは サーモスタットを 志向姿勢をもって

3.3 デネット2の還元主義

志向性は、そして「心」は比喩である、と デネット2は言う。 単純なものが複雑なものになっていくとき、 それまでなかった「心」が 突然出現する瞬間、 魔法の瞬間はないのである。

・・・・・ 【電子ポットに心を与えてもいいし、 人間から心をとってもいい】 ・・・・・

[ここの所は・・・]

3.3.1 クレーンとスカイフック

このデネットの思想が 前面に出た著述が 1996年の 『ダーウィンの危険な思想』 [ dennett-darwin ]である。 その中で、 彼は 進化にかかわる二つの思潮を 対照する。 一つは スカイフック (deus ex machina) であり、 もう一つはクレーンである。 ・・・・・ 【工事中】 ・・・・・

・・・・・ 【工事中】 ・・・・・

進化について還元主義創発主義
ダーウィンの進化論目的論
クレーンスカイフック
表 デネットの進化論

3.3.2 ライフゲーム (Game of Life)

印象主義的ではあるかもしれないが、 デネット2の還元主義、 クレーン論を理解するのに、 最適な方策は ライフゲームであろう。

・・・・・ 【工事中】 ・・・・・

ライフゲームでは初期状態のみでその後の状態 が決定される。碁盤のような格子があり、一つの格 子はセル(細胞)と呼ばれる。各セルには8つの近 傍のセルがある (ムーア近傍) 。各セルには「生」 と「死」の2つの状態があり、あるセルの次のステッ プ(世代)の状態は周囲の8つのセルの今の世代に おける状態により決定される。

セルの生死は次のルールに従う。

(1) 誕生

    死んでいるセルに隣接する生きたセルがちょう
    ど3つあれば、次の世代が誕生する。

(2) 生存

    生きているセルに隣接する生きたセルが2つか
    3つならば、次の世代でも生存する。

(3) 過疎

    生きているセルに隣接する生きたセルが1つ以
    下ならば、過疎により死滅する。

(4) 過密

    生きているセルに隣接する生きたセルが4つ以
    上ならば、過密により死滅する。

・・・・・ 【工事中】 ・・・・・

3.4 創発主義

デネット2の議論を(心の) 「還元主義」と呼ぶとするならば、 それと対照されるのが 「創発主義」である。

心の創発主義者、サール は言う--- 「削除するのはけっこうだ、 熱は分子の運動だろう。 でもそれはぼくの感じている「熱」 の説明にはなっていない」 [ searle-reductionism ]と。 ・・・・・ 【工事中】 ・・・・・

・・・・・ 【工事中】 ・・・・・

還元主義創発主義
サール
熱は分子の運動だ熱の主観 的経験
痛みはニューロンの配列の問題 だ痛みの主観的経験
表 見掛けと実在

3.5 創発主義者は歴史にかかわらない

・・・・・ 【還元主義の強さは歴史だ。】 ・・・・・

4. まとめと展望

一般的に還元主義創発主義
全体論
全体は部分の総和である総和以上である
アルゴリズム新しい性質が生まれる
じょじょいっき
唯名論実在論
「赤さ」は存在しない、赤いモノは存在する「赤さ」は存在する
実践知暗黙知
ゲシュタルト
メロディ
酸素・水素水の冷たさ
点の集合絵の美しさ
目、鼻、口の集合顔の美しさ、顔の認識
生物は化学へ還元される還元されない
化学は物理へ還元される還元されない
心は比喩だ(唯名論)心は存在する(実在論)
デネット2デネット1
魔法の瞬間はない魔法の瞬間がある
原始のスープから自己複製子、細胞、ダンゴムシ、人間の間にはジャンプはないジャンプがある
電子ポットも人間も程度の差質の差
クレーンスカイフック
志向姿勢は役にたつ志向姿勢は正しい姿勢である
ライフゲーム、進化論(目的論)
チューリングマシン
自己複製子
ゲーム理論(メイナード=スミス)
削除主義民俗心理学(人類学)
サール
熱は分子の動きだ熱の感じ
痛みはニューロンの編成だ痛みの主観的体験
(見掛けと)現実見掛け(と現実)
本質見掛け
存在論認識論
発生にこだわる歴史にこだわらない
じょじょいっき
表 心の実在論

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Bibliography

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ENDNOTES

[1] 対人 姿勢は、 わたしがポストモダンの人類学の 実験的民族誌というチャレンジに答えるために 持ち出した姿勢である。 [Back]

[2] しばしば「還元主義」が悪の 代名詞のように使われることがある。 悲しいことに人類学という分野でも そのような状況である。 わたしは還元主義にはこの上ない尊敬を いだいている。 その上で、還元主義に反対したい。 [Back]