根幹から枯れ枝へ

エンデにおける「生命の流れ」の考え方

Satoshi Nakagawa

2025-09-08

1 要約

戦後の東インドネシア研究の嚆矢となったフォックス(編)による論文集、『生命の流れ』 (Fox (ed) 1980) において、編者フォックスは東インドネシアという民族誌領域の特徴をいくつか挙げている。その内彼がもっとも強調するのが「生命の流れ」という考え方である。この地域では、婚姻にともなう女性の流れが生命の流れとしてとらえられているというのである。今回の発表では、エンデ人における生命の流れについて述べる。エンデの生命の流れには、他の地域に見られない特徴が二つある。一つは女性の流れが財の流れと表裏一体になっていることであり、もう一つは、常に複数の生命の流れが考慮されているということだ。具体的には、ある男性は確かに母の出生集団こそを源とするのだが、同時に父の源(FMB)をも継承するのである。具体的事例をとおしながら、この複雑なシステムの作動の様子を分析する。