成人式(その2)

1 ンドゥンバ(ニューギニア)族の男と女の成人式

1.1

INTRODUCTION (201)

次のようなニューギニア高地に特徴的な民族誌的特徴を有する:

Among these are primary dependence on sweet potato cultivation, pig husbandry and pork prestations (but not large-scale pig exchanges), patrilineal-descent ideology, nonhereditary big-man political leadership, endemic warfare, and male domination of public affairs. (202)

1.2 ンドゥンバにおける男/女関係(202)

NDUMBA MALE-FEMALE RELATIONS (202)

1.2.1 男の公共領域での優越(202)

個人としての女性が個人としての男性に口頭であるいは肉体的に攻撃をかけることはある。

しかし、女性(一般)の役割は、「聞き、見、命ぜられた通りに公的行事に参加すること」である。

While individual women may verbally and physically attack individual men, or even kill them indirectly through the ethereal weapon of their very natures, the social role of women is to listen, watch, and participate in public events as they are directed to do so. (202)

1.2.2 分離のテーマ

単に男と女を分離することではなく、成人した男を、他のメンバー(たとえば、まだ成人していない少年)から分離することが重要なのだ。

  1. 性による分業

男:バナナ、砂糖黍、タロ、ヤム

  1. 居住

(2.1) 家屋

家屋は、男の部分と女の部分とに分けられている。性交渉の時にだけ男はこの境界を横切るが、通常は性交渉は森の中でもたれる。(204)

(2.2) 男の小屋

男の家屋に、92人中48人(52パーセント)の成人男子が居住していた。

In 1971-1972, forty-eight of the ninety-two (52 percent) initiated males currently residing in Ndumba lived in traditional men’s houses. (204)

(2.3) 女の小屋

一つのハムレットに一つ、あるいは二つの女の分離小屋がある。メンスの時、出産の時、分娩して間もない頃ここにいなければならない。成人の男子は、厳格にこれを避ける。

Besides allowing seclusion, the houses serve as refuges and gathering places for women, sites for various women’s ceremonies, and “day-care centers” for infants and small children. (204)

メンスの時のため、あるいは出産の時のために女の道も用意されている。(205)

1.2.3 なぜ分離か

  1. 汚染する穢れ

この様な現象は「穢れの汚染」という概念で説明できるであろう。

  1. 危険な血および、(血の源泉としての)性器

性による分業は、男と女の本性に基づくものである。両性の接触は、双方にとって(特に男性にとって)危険なものである。

女性の穢れ(=男性にとっての穢れ)は、月経、出産に現われるわけだが、その元となる性器結合は最も危険なものである。(205)

下に述べる儀礼の中心テーマは、この様な女の「血」が、男性にもたらす「危険」である。(206)

  1. 危険な女性

女性と長い間接触すると、骨が溶け、息が切れ、死んでしまうことさえある。特にメンスの血は危険である。

Ndumba men report (and women concur) that frequent or prolonged contact with women can make men’s bones dissolve, their breath grow short, and, generally, lead to debilitation and even death. … Contact with Menstrual blood is particularyly dangerous.

実際、女性による(穢れによる)男性の殺害事件と言うものが知られている。

この様な「危険な」穢れと言うものは、伝染性のものと考えられている。(月経時の女性が手にとった食物も「穢れ」ている)。

同居を避ける。

男小屋が最も正常な場所である。

1.2.4 分離され得ないとき

  1. 結婚

結婚してもすぐに性交渉を始めるわけではない。

女性のンラーセ儀礼−>結婚式(非常に短い)−>男が「男小屋」で一日隔離される

これらの機会に結婚した男女が教訓を与える。

即ち、ンドゥンバにとって、性交と言うものは、苦痛に満ちたものであり、喜ばしいものであり、また男性にとって危険なものなのである。

These events collectively convey the impression … that sexual intercourse is at once painful, pleasant, and dangerous to men. (207)

−>男の狩猟(数カ月)−>女の家に対する労働奉仕(収穫まで)−>最初の性交渉

  1. 性交渉=最も危険

性交渉は、両性の間で避けることができない肉体的接触であるが、しかし同時に最も危険なものでもある。それ故、ンドゥンバ族の成功に対する態度は両義的である。成功の頻度は最小限に抑えられている。

Sexual intercourse is at once the most dangerous and the most inevitable form of physical contact between the sexes. For this and other reasons, Ndumba attitudes toward it could be characterized as ambivalent. If sexual norms are followed (and the birth spacing of children on the average, three years as well as other information, suggests that they probably are), sexual contact can at least be kept to a low frequency. (206-7)

  1. 妊娠(民俗生物学)

Pregnancy and childbirth are viewed by women as painful, restricting, and generally negative.

1.3 ンドゥンバの年齢カテゴリーあるいはジェンダーの獲得

NDUMBA AGE CATEGORIES

ンドゥンバ族にとって、ジェンダーは、一挙に獲得されるものではない。それは、漸次獲得されていくものなのだ。

1.3.1 ンラーイナ(赤ん坊)

nraa’ina “Baby”

1.3.2 ンラームワ(少年)/イアータラ(少女)

nraammwa (“Boy”) / ’iaatara (“Girl”)

5−6才の頃、少女は耳に穴をあけて貰う(大した儀礼ではない)また、畑仕事や、小さい子供のお守りを言いつけられる。

男の子たちは、友達仲間で、集落や畑をうろつく。しかし、森は入口あたりまでしか入っては行けないし、男の小屋にはいるのは厳重に禁止されている。

Boys form play groups of age-mates and wander at will through hamlets and gardens but are confined to the lower fringes fo the forest .. and forbidden entry into the men’s house compound. Girls are increasingly given garden tasks to perform and responsibility for the care of younger children. (208)

1.3.3 ウンマンラ(少年、10−12)

’ummanra (boy, 10-12)

少年は、10から12才になるとウンマンラ儀礼に適した年齢であるとみなされる。

1.3.4 イアヴァーティ(少年、16−20)

’ia’vaati (boy, 16-20)

16から20才くらいの少年が10人くらい集まれば、イアヴァーティ儀礼が開かれる。結婚可能になる。

1.3.5 クワーシ(少女、17−19)

kwaasi (girl, 17-19)

初潮を迎えるとクワーシになる。

1.3.6 ンラーセ(少女、21−25)

nraase (girl, 21-25)

21から25才くらいの女に対して開かれる儀礼。結婚可能になる。現在では、ンラーセ儀礼と結婚式を、ウンマンラ儀礼の最後の日にいっぺんにする事が増えてきた。(208−9)

1.3.7 まとめ(さとし)


                         (10-12)        (16-20)
male:      +-- nraamwa  -- ummanra -- 'ia'vaati 
-------
nraa'inra -|                               
female:    +-- 'iataara -- kwaasi -- nraase ---
                         (17-19)             (21-25)

1.3.8 二つの成人式

  1. ウンマンラ儀礼

’ummanra ceremony

10から12才の少年に対してなされる儀礼

  1. クワーシ儀礼

kwaasi ceremony

初潮の時に行う儀礼

1.4 ウンマンラ儀礼(209)

THE ’UMMANRA CEREMONY (209)

1.4.1 スポンサー

少年のスポンサーは、彼の父系氏族から出てはならない。通常は、彼のMBがなる。

1.4.2 第一日

The First Day (210)

  1. 早朝−−準備

early in the morning

女たちによって、土器が用意される。女たちによって、少年が飾られる。

  1. 朝−−儀礼の始まり

by midmorning

(女たちによって)土器から食物が配られる(少年は除く)

ホーンの音につられて、様々な村から男たちが集まって来る。叫び、歌い、ドラムを鳴らし、羽飾りをふらし、弓を鳴らし、盾を叩きながら。

女性も集まって来る。結局、ンドゥンバ族全体が集まって来る。

  1. 成人式プロパー

(13.1) 丘へ−−少年の(女たちからの)隔離

男たちは少年を森へ連れて行こうとする。女たちは、驚いて、抵抗をする振りをする。笑い声、抵抗。

男たちは、少年を連れて、丘を登る。女たち(母親)は後ろから罵り声をあげる。

(13.2) 森へ−−行列は進む

森の入口。女と子供を残して、男たちは、少年を連れて森の中にはいる。女たちがついて行かないように、女装をした男が監視する。

森の中を行列は進む。待ち伏せした攻撃隊が、行列を襲う。川へ逃げる。

(13.3) 川にて−−試練

少年は、川岸で、膝まづかされ、服を脱がされて、水の中につけられる。

スポンサーは少年の後ろ。手と頭をつかみ、弓なりにする。前にいた男が、特別な草で、鼻に穴をあけ、少年の鼻から血を出すようにする。

少年は水につかる。

あひるの卵を探すように言われる。その時、次の攻撃がなされる。逃げて次の小屋行く。

その小屋で、少年たちは、小さな弓矢で性器を突き刺されるような真似をされる。

「戦いの矢」をスポンサーから渡される。そして、これ以後、男の小屋にある矢を決して盗んではならぬ、といい渡される。

もう一度、水浴をし、新しい服に着替え、木の葉で顔を隠し、笛を持つ。

(13.4) 帰路−−再び女たちと

同じ道を行列は帰る。更なる攻撃が待ち伏せ隊からなされる。森からで、取り残されていた女・子供と合流する。

待ち伏せ隊が森から出、女たちの第一列にならび、行列を(特にスポンサーを)脅す。少年たちは叫び声をあげる。全員が丘を下る。

  1. 集落へ−−男は女をかきわけ男の小屋へ

集落へ到着。男の小屋に近づくと、女(母親や、その他の年輩の女たち)は壁を作る。その壁を破って行列は男の小屋に入って行く。女と子供は取り残される。

女たちは、踊りを踊り始める。未婚の女はその踊りからすぐに身をひく。女たちは、踊りの中で、出産の真似ごとをしたりする。女たちは興奮がさめると、座り、食事をし出す。祭りの雰囲気は続く。

男たちは、小屋の中庭の中で、小屋を取り巻く。

  1. 小屋の中

小屋の中は、もっと真剣な雰囲気である。行列は、唄を歌い、叫び声をあげながら小屋の中にはいる。合図とともに、弓で聖なる中心のはしらに触る。一度、小屋の外に出る。もう一度、少年たちは鼻から血をださされる。弓矢を与えた「先頭の長」は鼻飾りを少年たちに与える。

少年は、小屋の後ろにある秘密の便所の在処を教わる。

再び小屋の中にはいる。がさがさの表面をした葉を嘗めさせられ、下から血を出す。

(15.1) 夕暮れ時

at dusk (214)

角笛が聞こえる。男たちが集落を出、少年のいる小屋へと集まる。

(15.2) 晩−−教訓の時

as the evening wears on, … (214)

教訓を含んだ話、唄を少年に聞かせる。様々な禁忌を侵した際の危険についての教訓である。

誰にでも近付けるような場所で小便をする、見知らぬ女性から食物を受け取る、あまりにも頻繁に性交渉を重ねる、女性の跨いだ弓を使う−−−このようなことは全て重病、異常な成長、更には死に至ると考えられている。

Urinating in a place that is accessible to the public, accepting food from a strange woman, having sexual intercourse “too often,” using a bow after a woman had stepped over it all of these are said to have resulted in serious illness, abnormal growth, or death. (214)

特に性行為の危険性が強調される。

笛は森の精霊モクレ(Mokure)のものであると、教えられる。

様々な男たちが来訪する。

食物禁忌について教わる。

ときどき、ペニスにイラクサがこすりつけられる。

(15.3) 夜明け前−−女によって殺されていった男たちの話

Toward dawn … (215)

女によって殺された男たちの話。廻りにいた男たちは、悲しみ、泣く。

「おわった」という叫び声。

  1. 小屋の外−−女たち(215ー6)

小屋の廻りは女性たちが取り巻いている。彼女たちは、異装束をつけている(クワーシがンラアセふうに装っていたりする)。

男がときどき小屋から出て、「なかなか良い唄だよ」という。すぐに小屋に戻る。

唄は一晩中続く。夜明け近く、女たちは、行列を作って、少年の辿った森の道を辿る。同じ川で水浴をする。

男小屋の廻りに、森で拾ってきた帰の葉を投げ散らかす。

明け方、男が小屋から出ると、小屋の廻りが女子供のあらした後である。

1.4.3 二日目

The Second Day (216)

同じ様である。警告、教示が続く。

1.4.4 三日目

The Third Day (217)

Early mornig activities are varied. … (217)

  1. 少年の盛装

男たち集まり、訪れる。行列をつくって、男の小屋へ。村へ。

  1. 女たちの贈与:新しい下げ皮袋、パンダナスの寝袋、矢

の入れ物。

  1. 少年たちは自由に歩き回る。

これからは、男の家中心の生活となる。

1.5 ウンマンラ儀礼における「性」対立(218)

SEXUAL OPPOSITION IN THE ’UMMANRA CEREMONY (218)

1.5.1 儀礼のタイミング

特に生理的成熟とは関係していないが、いつでも良いと言うわけでもない。

It appears that the age range of novices is fairly narrow, with a mode of ten to twelve years old. (219)

1.5.2 テーマ

この儀礼は「男の成長」をテーマとしている。

「男の成長」は(女の成長とは違い)決して自動的なものではなく、常に監視していなくてはならないものである。この成長の傷害となるものが「女」(の力)なのである。

男の肉体的成長は、必ず、知的・イデオロギー的成長に伴われていなくてはならない。

  1. 教育としての儀礼

ウンマンラ儀礼は少年たちの知識獲得のプロセスを加速することを目的としている。この儀礼は、「教育」に関わるのだ。単に情報を伝えるという意味のみならず、少年の性格を鋳型にはめるという意味で。

The ’ummanra ceremony … accelerates a process by which boys acquire knowledge and a view of the world which will, in the end, “make men of them.” It is concerned with education, not only in the sense of transmitting information but, …, with the molding of a youth’s character.

  1. 教説の中心テーマ:脆弱な男、強力な敵

「我々『本当の男性』は脆弱な存在である。一緒になって、知識と力を共有することによってのみ、我々を破壊することのできるような力に抵抗して、世界を支配できるのだ。」

We “real males” are distinct and vulnerable; only together, sharing our knowledge and our strength, can we prevail against the forces that by thir very nature can destroy us. (220)

(21.1) 敵の力=血

彼らの恐れる敵の力は:女であり、女の領域であり、そして「血」である。

The locus of their feareed “forces” is clear enough: women, their domain, and anything that contains their essence, especially their blood. (220)

1.5.3 儀礼の中の敵意

  1. 男と女の分離

単に(例えば)身体装飾を別々に行うだけでなく、(たとえ)一緒に歌ったり、踊ったりするときでも、別々のグループでそうする。

Not only do men and women prepare their body decorations and, generally, wat apart, but when they do come together, as on the first and final mornings, they sing and dance as separate groups. (220)

  1. 男と女の敵意

女が何度も「行列」を攻撃する。

1.5.4 鼻血の意味

鼻血が月経の血の真似であるかどうかは分からない。「少年を力強くし、母の血を取り除く」ものと考えられている。

とにかく、少年が「男の小屋」にはいるための「浄化」の儀礼と考えられる。

かくして、「汚染された」少年が「浄化された」成人になるのである。

1.5.5 浄化理論への障害:クワーシ儀礼にも鼻血がある

One difficulty with this interpretation .. is that nosebleeding is also performed on girls in teh kwaasi ceremony as they reach menarche.

1.6 クワーシ儀礼(222)

THE KWAASI CEREMONY (222)

1.6.1 出だし

少女が初潮の時に行われる。母親が少女を隔離小屋に案内する。

夜、母親がその他の年輩の女たちと戻って来る。そして月経の説明をする。

翌朝、母親と母親の「姉妹」たちが、少女に贈物をする。公的に少女の地位が変わったことが認められたのだ。

1.6.2 最初の五日間

女たちが来訪して来る。メンスが終って初めて公式な儀礼が始まる。

六日目に、多くの女たち(クワーシ、ンラーセ)が様々な村から集まって来る。

夜になり、男たちが「男の小屋」に入った後、女たちは隔離小屋に集まり、秘密を開示する(これが我々の力の元であり、男たちとは、決して共有されないものである)。

1.6.3 小屋の中の席順

席順がはっきりと決められている。

To her right, her mother sits alone, warming herself beside the low fire. On here left, three noted curers, one of whom is a half sister (mother’s daughter) to the girl’s mother, await the cue to start their performance. (223)

女たちはどんどん入って来る。

穀物や作物について歌う。

1.6.4 最初の踊り手

母娘のペア。モックチェイス。(母は男装している)唄が続く。「男は敵だ」という繰り返し。

様々な豊饒について語られる。

(初潮の娘の)母によって支度された食事が、みんなに配られる。

1.6.5 2番目の踊り手

呪医が作物の成長を身振り、手振りで示す。母親が、男性に危害を加えないように教育をする。

それからゆげの出ているアスパラガスが観衆の中を手渡される。そして、娘への新しい責任についてのレクチャーが母によって始められる。最初は警告である:さてもうおまえはクワーシになったのだから、足をどこに下ろすか注意しなくてはならない、下手なことをすれば、畑、食物、豚、そして特に男たちが、おまえの伝染性の「女性」という力に負けてしまうのだ。おまえの兄弟や父親はおまえから食事を受け取るのだから、気を付けなければならない。彼らはおまえを信頼しているのだ。おまえは、彼らがとても弱いことをいつも心に留めておかなければならない。

Steaming asparagus stalks are then passed through the crowd, and the initiate is lectured about her new responsibilities by her own mother, The rhetoric begins with a warning: now that she has become a kwaasi, she must watch where she steps les her gardens, food, pigs, and especially men succumb to the contaminating power of her womanhood. She must always take care not to inadvertently harm men, for her father and brothers will take food from her hands, entrusting her to be mindful of their vulnerability. (224)

呪医が立ち上がって「おまえの母親の言うことは正しい」と言う。

1.6.6 新たな踊り手

中性装(無性装)

メチャメチャに踊る。

鰻、鳥、有袋類について語られる。(豊饒性)

1.6.7 4番目の踊り手

午前3時頃

水の容器が廻される。水を含んで踊り手にかける。興奮気味になる。踊り手が消える。

自然の恵みについての唄が、ぱらぱらと歌われる。ヤムの話がされる。

呪医がヤムを股に挟み、勃起したペニスを持って、踊る。

1.6.8 もう一組の踊り手

火の近くを踊る。呪医にとどめられ、遠ざけられる。踊り手が亦興奮して来る。

1.6.9 最後の踊り手(5時頃)

クワーシとンラーセが衣装を取り替えて踊る。

Their dress is deceptive: four wear the full bark skirts of nraase, while one has donned the side-slitted bark kwaasi skirt. In reality, the first four are kwaasi disguised as nraase, while the lone nraase int hir midest masqurades as a kwaasi. (226)

これは組織だった踊りである。退場する。

新しい唄が歌われる。これは葬歌である。

「夜明けだ」と言う声とともに、みんな帰る。隔離小屋には少女と近しい女だけが残る。

1.6.10 公の儀礼

翌日に少女は隔離小屋から出て来る。

土器が用意され、豚が殺され、解体される。多くの人々が村の庭に集まる。食物が土器で調理されている間、娘は彼女の母系氏族の男たちに呼び出され、近くの川につれていかれる。

An earth oven is prepared, pigs are killed and butchered, and large numbers of people … gather in the hamlet courtyard. While the food is steam cooking in the oven, the girl is summoned by men of her matriclan and led to a nearby stream, where she is escorted into a shallow pool.

1.6.11 そして、MBによって彼女は鼻血をだされる。鼻血は川に流す。こ

のあいだ、観客は陽気に騒ぐ(ウムマンラ儀礼の荘厳さとは対照的である)

MBからさとうきびをもらう。MBは彼女の新しい責任についての短い演説をする。

豚が配分される。全員が帰宅する。

1.7 クワーシ儀礼における「性」対立(227)

SEXUAL OPPOSITION IN THE KWAASI CEREMONY (227)

1.7.1 新しい責任

  1. 農耕等の仕事の責任

  2. 新しく獲得された力に対する責任

クワーシになってはじめて男の脆弱さを知る。

危険な武器の持ち主としての責任

この力は、単に男に対してだけでなく、女性、また自分にとっても危険なのである。

女の穢れによって男が死ねば、その女は殺される。(普通は単に疑惑が表明されるだけだが−−−調査中に、ある女性が、その疑い(兄弟の弓を踏んだ)で追放になった事件がある)

1.7.2 二つの儀礼

意図において両立している形も非常によく似ている

クワーシ儀礼の唄の中で、「男は敵だ」と歌われるとき、女性はウンマンラ儀礼の唄や物語の中に現われた以上の《言葉の上での露骨さ》を獲得している。When a song states, “Men are the enemy,” the women achieve a degree of verbal explicitness unparalleled in the ’ummanra songs and stories. (229)

1.8 両儀礼における「性」補完性(229)

SEXUAL COMPLEMENTARITY IN THE CEREMONIES (229)

1.8.1 二つの儀礼の相違点


ウンマンラ               クワーシ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
複数の若者               一人の娘
いつでも                 肉体的成熟

親族の絆はない           親族の絆

鼻血だし−>教訓         教訓−>鼻血だし
公的な儀礼               私的な儀礼
public (none inside)     private (none outside)

成熟を加速する           成熟を確認する
最後に贈与               最初に贈与

1.8.2 補完性を見るための三つの疑問

  1. なぜ女も鼻血を出すか

  2. なぜ女が男の秘密の厳守に協同するだけではなく、黙認するのか

  3. どれだけ、性の対立が内化されているか

1.8.3 男の儀礼

補完性は、暗黙の内にのみ表現されていた。女性が常に顔を出す。

男儀礼を用意するのは女たちである(補完性)

Women produce children, as men cannot; it remains for men to create society, and to make of children the adults that society needs… (231)

男儀礼においては、対立が補完を圧倒していた。

1.8.4 女の儀礼

「男」が舞台に登場する(男儀礼に女が登場はしない−常にオフ・ステージであった)

1.8.5 成人のステップ(男と女)

  1. ンラームワ→ウンマンラ

a public preparatory stage, with women playing a central role;

(29.1) 公的な準備段階:女性が中心的役割

(29.2) 私的な段階:鼻血だし、男の小屋での教訓:まったく男だけ

(29.3) 公的な段階:若者の公的認知

  1. イアータラ→クワーシ

a private period of instruction in the seclusion house, carrrid out by women but with female transvestite “men” playing important roles;

(30.1) 私的な段階:分離小屋での教訓:女性によって運営(男装した女性

が重要な役割)

(30.2) 半私的な段階:鼻血だし:子供だけが入っては行けない(男がとり

しきる)

(30.3) 公的な段階:祭り、男によって行われる付加的な儀礼

1.8.6 まとめ

おとこは、(女の用意した儀礼を通じて)、男だけによって「男」になる。

女は、男女両方のいるところで、「女」になる。

女をクワーシにするのは、MBの鼻血とりの儀礼によってである。

1.9 ンドゥンバ成人儀礼における男の優越と女の力(232)

MALE DOMINATION AND WOMEN’S POWERS IN NDUMBA INITIATION (232)

1.9.1 鼻血

鼻血だし:男の「力」の儀礼的承認

女の力は儀礼的承認を必要としない。

月経、出産の血は神秘的脅威であると同時に、男支配への挑戦なのだ。

女はより性的にモティヴェイトされていると、考えられている。男・社会の健康状態に対するコンスタントな脅威なのだ。また信頼もされていない。

この様な女に子供の養育を任すことは、子供の危険である。

自動的に、少年は母親にひかれる。そして、彼は男性の共同体によって母親から引き離されなくてはならないのだ。

若者は、自然な事なのだが、女性に引き付けられる。若者の忠誠心を保つためにも、常に離しておかねばならないのだ。

もし男が、自分の男性仲間ではなく、常に母親や、女性のためを思って行動していたならば、ニューギニアの社会構造は破綻をきたしてしまう。常に戦争があるというニューギニアの状況を考えてみれば、そんなことはとても耐えられない事なのだ。

Boys are naturally attracted to their mothers and must be removed form them by the community of males. Young men are naturally attracted to females and must be forcibly kept in line lest their loyalties stray. If a man, in the depth of his passion, or even his everyday routine, came to favour his mother or wife and wanted to please her more than he wanted to please and help his fellows, the foundtion of the New Guinea social order would collapse. … Given the necessity for strength and cooperation among males [in the context of chronic warfare], it would be an intolerable situation. (Langness 1974: 208)

鼻血だしの儀礼は、男性の優越、力の劇的で、画像的な再現なのである。「女の力」に「ついての」の儀礼で、この様な顕示がされると言うことが重要なのだ。

1.9.2 男のジレンマ

少年が成人となるのは男の力によってである。

男たちは少年を必要とする。しかしそのためには、女性の出産する力、養育する力を認めなければならない。

Men need boys, but to have them they must acknowledge the procreative and nurturing powers of women. (235)

男の儀礼(ウムマンラ儀礼)の最初の方で、行われているのは、この様な少年に対する権威の移行なのである。

1.9.3 血の支配

月経の血を男はコントロールできない。しかし、「鼻血」を男が支配するのだ。

男が社会的に権威を持つことの確認を、これらの儀礼は伝えているのである。

1.9.4 なぜ女は黙認するか

男の暴力を恐れるから、と言うのは当たってはいない。小屋の中で、男に対抗するすべを教えて貰っている。

我々の答:ンドゥンバ族の女は、彼女ら自身自分の神秘力を信じている。男/社会の安寧のためにその力を制御しなくてはならないと思っている。

この様な力を司る儀礼を、男は、女だけに任せてはおけない。


男の儀礼:男の団結
女の儀礼:社会の団結

2 さとしのまとめ

3 参考文献

3.1 「ジェンダー・性・セクシュアリティ」須藤健一(合田涛(編)『

現代社会人類学』弘文堂

3.2 Terence E. Hays and Patricia H. Hays 1982 "Opposition and

Complementarity of the Sexes in Ndumba Initiation" in Herdt, Gilbert H. (ed) 1982 Rituals of Manhood: Male initiation in Papua New Guinea University of California Press: Berkeley, Los Angeles, London.

3.3 柄木田康之「ニューギニア高地における男と女の象徴性」『女性人

類学』(至文堂)

3.4 Gillison, G. 1981 Image of nature in Gimi thought. in

MacCormack, C. P. and A. M. Strathern (eds) 1981 Nature, Culture and Gender (Cambridge UP): 143-174